曽我部研究室の木村 友彰さん(きむら ともあき 基盤理工学専攻博士前期2年)提案のプロジェクト「量子回路設計に向けた量子部分観測マルコフ決定過程(Q-POMDP)手法の開発」が、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公募しておりました「2021年度未踏ターゲット事業」に採択されました。
2021年度未踏ターゲット事業公募結果について:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
「未踏」は、経済産業省所管である独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施している、”突出したIT人材の発掘と育成”を目的として、ITを活用して世の中を変えていくような、日本の天才的なクリエータを発掘し育てるための事業です。現在、未踏では3つの事業(未踏IT人材発掘・育成事業、未踏アドバンスト事業、未踏ターゲット事業)が展開されています。
今回、木村さんが採択された「未踏ターゲット事業」は、「革新的な次世代ITを活用して世の中を抜本的に変えていけるような先進分野について、基礎技術や領域横断的技術革新に取り組むIT人材に対し支援を行う」とされております。未踏の中でも特に未踏ターゲット事業の研究テーマは、研究開発が進む新たな技術プラットフォームを用いる分野、数学等の専門性を必要とする分野が対象となるため、数学を中心とした理学的な知識とITの技術を合わせ持った高度な専門性が求められます。
2021年度は、「量子コンピューティング技術を活用したソフトウェア開発」がターゲット分野として取り上げられていました。木村さんの提案プロジェクトは、「量子回路設計に向けた量子部分観測マルコフ決定過程(Q-POMDP)手法の開発」というもので、強化学習を使って量子回路設計を行うという先端的かつ高度な科学技術を兼ね備えた新しい提案であり、量子分野とAI分野の掛け合わせにも価値があるということで採択に至りました。本学において同事業に採択されたのは木村さんが初めてです!
■プロジェクト概要
量子回路の設計は、古典コンピュータを用いて行う場合シミュレーションにより最適化を行うので、量子ビットの数が多くなると計算量が指数的に増えてしまうという問題がある。そのためより多くの量子ビットに対して回路設計を考えるためには実機の量子コンピュータを使うことを考える必要がある。
具体的には、最適な行動を学習するフレームワークである強化学習を用いて回路を設計することを考える。特に量子コンピュータ実機を使うことを考えた場合量子状態は完全に観測することができないため、不確実な環境での最適行動を学習する部分観測マルコフ決定過程(POMDP)を用いて最適化を行う。先行研究として量子におけるPOMDPの理論QOMDPが提案されたが、具体的な実装例は提案されなかった。
本プロジェクトでは量子回路設計のための量子POMDP手法を開発・実装し、シミュレータ,実機を用いて回路設計を行い、開発手法の性能を評価する。具体的な手順としては、最初にまず1量子ビットの制御問題を量子POMDPにより解くことを考え、提案手法の実装を行う。次に問題を複数量子ビットに拡張し、GHZ状態のような決まった出力状態を出力する回路設計, 任意の出力状態を出力する回路設計を行う。最後に実機量子コンピュータを活用して回路設計を行う。
プロジェクト詳細については下記のニュースリリースをご参照下さい。
IPA HP https://www.ipa.go.jp/jinzai/target/2021/gaiyou_yn-1.html
大学HP https://www.uec.ac.jp/news/announcement/2021/20210601_3416.html
曽我部研究室HP https://cluster-iperc.matrix.jp/research-news/1541/